3歳児健診は全ての自治体で行われる重要な検診です。
検診の視力検査で異常を指摘され、今後どうなるか心配な方もいらっしゃるでしょう。
筆者の次女も、3歳半検診で弱視を指摘され、現在眼鏡による治療を受けています。
この記事では、以下の内容を説明します。
子どもの弱視は、適切に治療すれば改善を見込めます。
不安も多いと思いますが、今後の治療の流れを知り、前向きに治療に取り組みましょう。
なお、治療方法はお子さんの症状・病院の治療方針によって異なるため、今回ご紹介する例が全てではないことはご承知ください。
子どもの弱視治療は治療用眼鏡をかけること
子どもの弱視治療の多くは、治療用眼鏡をかけ、目のピントを合わせる練習をすることです。
薬を飲むとかじゃないのねぇ
眼鏡をかけて正しい視覚刺激を与え、視力の発達を促します。
視覚刺激は多い方が良いため、プールや激しい運動、お風呂、寝る時以外はずっと眼鏡をかけます。
代わりの治療法はないため、少しずつでも慣れることが大切です。
子どもの弱視は早めの治療が重要
弱視治療で重要なのは、早く見つけて治療することです。
うまれたての赤ちゃんは明るさが分かる程度しか目が見えませんが、成長と共に視力も発達、3歳頃には約半数の子どもが視力1.0に達します。
視力の発達は8歳ごろまで。
時期が決まっているため、少しでも早く治療を始めることが非常に重要です。
(小学校の眼科検診で指摘された例など、8歳を超えてから治療を開始しても、良好な結果が得られた報告もあるので安心してくださいね。)
また、幼稚園入園を控えたお子さんの場合、眼鏡の取り扱いに慣れてから入園したいところ。
次女は入園直前に弱視だと分かったため、幼稚園で眼鏡をかけていられるか、非常にハラハラしました。
3歳児検診~弱視治療の流れ
ここからは、3歳児検診から実際の治療に入るまでの流れを説明します。
初診から眼鏡の指示書が出るまでに、1週間以上かかることが普通です。
実際の治療が始まるまでに時間がかかることもあるので、注意してくださいね。
1.検診で視覚の異常を指摘される
自宅の予備検査が上手く出来なかった場合、検診会場で再検査を行います。
再検査でも引っ掛かると、眼科への受診を宣告されます。
筆者は市内の眼科リストを見せていただき、実績のあるクリニックを教えてもらいました。
また、検診後のフォローのため、治療が始まったら「病院名」「眼の状態」「治療内容」を電話連絡するよう、子ども支援課の連絡先も渡されました。
次女は検診の地点で「中程度の弱視疑い」と視能訓練士の方に言われ、かなり覚悟が決まりました。
<視能訓練士とは>
小児の弱視・斜視の矯正や、視機能の検査を行う国家資格所持者です。(日本視能訓練士協会のリーフレットはこちら)
3歳児検診や眼科での視力検査・視能訓練(見る力を引き出す訓練)に関わり、弱視治療を大きく助けてくれます。
弱視の検査や治療に関する説明は視能訓練士から受けるため、現在の次女は主治医より視能訓練士の方に接する時間が長いです。
2.眼科の初診
早めに眼科を受診しましょう。
次女が受けた検査の一部を紹介します。
- 屈折検査:目の屈折率を見ることで近視・遠視・乱視の度合いが分かる
(スポットビジョンスクリーナーというカメラみたいな機械・中を覗き込んで気球を見る機械の2種類) - 視力検査:視力検査と同じくランドルト環(Cの輪っか)を使った検査
- 眼位検査:ペンライトで眼を照らすことによる斜視の検査
- 眼科医による診察
お子さんの年齢・理解度・病院の設備などにより、細かな検査内容は異なります。
3.検査前1週間の目薬使用
治療用眼鏡を作るために、眼の状態を正確に検査します。
眼鏡を作る前には、無意識に眼の力で調整しているピントをリセットした状態での検査が必要です。
そのため、次女は「日点アトロピン点眼液1%」という目薬を検査1週間前から使用しました。
しみないと言われましたが、次女は「しみる~!」と文句タラタラ。
眼の瞳孔が開くため、太陽の光をかなりまぶしがりました。
外出時に帽子をかぶせても、つばが小さかったので思ったほどの効果は得られませんでした・・・
もし体に合わなかった場合は「サイプレシン点眼」というしみる目薬になるそうです。
4.精密検査
アトロピン点眼を使用した状態で、屈折検査を行います。
眼鏡を作るために、レンズを色々と入れ替えて視力検査を行いました。
5.治療用眼鏡の処方
眼鏡の処方箋が出され、眼鏡屋に持参します。
処方箋はどの眼鏡屋でも大丈夫ですが、筆者は利便性から眼科の隣にある眼鏡店を利用しています。
6.左右差がある場合はアイパッチ
左右の視力に差がある場合、無意識に良い方の目で見るために、悪い目の発達はどんどん遅れていきます。
そのため、良く見える眼をアイパッチで隠し、悪い方の目を強制的に使わせる訓練をすることがあります。
悪い方の眼がサボらないようにするのね
アイパッチの指示は眼科で出されるため、自己判断でつけることは絶対にやめましょう。
次女も左右差があるため、悪い方の視力が上がらなければアイパッチを使用すると言われています。
7.定期的に受診
薬を飲む治療と違い、「薬が無くなったら来てね」とはなりません。
定期的に受診し、眼鏡によって視力がどのように変化するかをチェックします。
次女は1か月後の受診を指示され、検査の予約を取っています。
弱視治療の眼科の選び方
弱視治療は、病院との長い付き合いが必要です。
しっかりと弱視治療をしてくれる病院を選びましょう。
1.検診で教えてもらった眼科のリストから選ぶ
筆者は、検診時の相談で「3歳児検診で引っ掛かった子は、どこの病院にかかることが多いですか?」と質問しました。
その結果「どこが良いとは言えないけれど、〇〇病院に掛かる子が多いようだ」という話を聞けました。
自宅に一番近い眼科と迷ったのですが、検診からの受診もスムーズで、子どもの扱いも非常に慣れている病院がよいでしょう。
2.通いやすい病院を選ぶ
自宅や幼稚園・保育園からの距離や診察時間もチェックしましょう。
子どもが眼鏡を壊したり、何かあった時にすぐ駆け込む必要があるからです。
3.評判の良い病院を選ぶ
眼鏡をかけたお子さんがいるママが知り合いにいるなら、ぜひ評判を聞いてみましょう。
ただし先生の印象は個人によって差があるため、100%信用するのではなく、最後は自分で決めましょう。
日本弱視斜視学会では、弱視・斜視を専門とする医師の一覧を公表しています。
紹介されている医師は少ないのですが、お住まいの近くに専門医がいるかを一度見ておくのもおすすめです。
3歳が眼科を受診する際の3つの注意点
だんだんしっかりしてくるとは言え、まだ3歳。
上手く検査が出来ないことも多いです。
眼科受診にあたって注意したいポイントをご紹介します。
1.子供の機嫌の良い時間を選ぶ
検査では、大きさや眼鏡のレンズなどの条件を変え、「これ見える?」と何度も聞かれます。
眠い、空腹などで機嫌が悪いと検査が上手くできない可能性も高いです。
正確な検査ができるように、できるだけお子さんの機嫌のよい時間に受診しましょう。
2.予約が可能な病院なら予約をする
弱視は多くの検査を行うため、予約できる病院なら予約しておいた方がよいです。
待ち時間が長いと検査に呼ばれたときは既に不機嫌になっている可能性もあるため、待ち時間対策はしっかりと施しましょう。
3.長期休みは検査が混むので注意する
先ほど説明したように、子どもの弱視検査ではピントをぼやかす点眼を使用します。
幼稚園や学校生活に支障が出ないよう、子どもの検査は長期休みに集中する傾向があります。
春休みだったので、検査の予約が取れたのは初診の2週間後でした・・・
3歳児検診がどの時期になるかは自分で決められないことですが、「長期休みの検査は混む」と覚えておきましょう。
弱視とは?
ここからは「弱視」について説明します。
あまり馴染みのない言葉のため、筆者も最初は大きなショックを受けました。
お子さん自身にもいずれ分かってもらう必要があるため、先に理解しておきましょう。
弱視とは「眼鏡をかけても視力が出ない状態」のこと
弱視とは、強い遠視や乱視・斜視などにより「眼鏡をかけても視力が出ない状態」を指します。
赤ちゃんは目がほとんど見えない状態で生まれてきますが、いろいろなものを見て、脳に刺激を与えることで視機能が発達します。
しかし全幼児の2-3%に現れる弱視では、生まれてからずっとぼやけた状態のものしか見えないため、視機能が十分に発達しません。
刺激がない状態が続くと、脳は眼からの信号をうまく受け取れなくなってしまいます。
この状態では、眼鏡をかけても正しい形を脳が認識できず、視力が上がらないのです。
- 弱視:視機能の発達に問題があり、眼鏡をかけても視力が出ない状態。
- 近視:眼球の形が前後に長くなることでピントがずれてしまい、遠くのものが見えづらい状態。
- 遠視:眼球の長さ・角膜や水晶体の屈折力が異なることでピントがずれ、近くも遠くも見えづらい状態
- 乱視:角膜の表面がきれいな球面でないため、眼のピントがうまく合わずにものがブレて見えたり、二重に見える状態。
「遠視」は遠くは見えると思っていたけれど、近くも遠くも見えないのね・・・
弱視の治療目標
眼のピントを合わせる能力が改善し、矯正視力が1.0出るようになることを目標とします。
あくまでも矯正視力であり、裸眼の1.0ではないことに注意が必要です。
弱視の原因である「遠視」や「乱視」を治すわけでは無いため、基本的には眼鏡やコンタクトを使用し続ける方が多いようです。
遠視・乱視・近視などを直接的に治すのは「レーシック」ですが、保険対象外の治療で、小児の弱視治療とは別物です。
弱視は全部で4種類
弱視は次の4つの分類に分けることができます。
- 1.不同視弱視
- 2.屈折異常弱視
- 3.斜視弱視
- 4.形態覚遮断弱視
3歳児検診では、1~3の弱視が見つかることが多いです。
意外と簡単な分類なので、一緒に見ていきます。
1.不同視弱視
片方の目に強い遠視や乱視があるために起こる弱視です。
見えている方の目で生活できるため、3歳程度では日常生活で気づかないことも多いです。
3歳児検診で気づかないと、小学校入学まで見過ごされる可能性があります。
2.屈折異常弱視
両方の目に強い遠視や乱視があるために起こる弱視です。
3.斜視弱視
左右の目の向きがずれている「斜視」が原因で起こる弱視です。
ものを立体的に見る時は、左右の目で見たものを脳内で1つに合成しているのですが
小さいころから目の向きがズレていると、左右の目で見たものを脳内で合成できないため、立体的に物を見たり、奥行きを感じることが難しくなります。
4.形態覚遮断弱視
まぶたが下がっている、先天性白内障などにより生まれた時から角膜などに曇りがあることで生じる弱視です。
視野を妨げるものを物理的に取り除く手術が必要になります。
子どもの弱視用眼鏡は補助が出る
弱視治療用の眼鏡は、保険組合と自治体から購入の補助を受けられます。
眼鏡の購入費用を支払ったあとに、領収書と必要書類を添えて申請します。
就学前の子どもが眼鏡を購入した場合、
保険組合:眼鏡の金額×0.8
(補助上限:38,902円(税込))
自治体:眼鏡の金額×0.2
かなりの金額を、補助でまかなうことが可能です。
詳細は保険組合や自治体により異なるため、ホームページを確認してみましょう。
1.保険組合による給付
保険組合と自治体の給付は、先に保険組合の給付を申請し、そのあとに残りの金額を自治体に請求します。
給付を受けるには、以下の書類を保険組合に提出します。
- 療養費支給申請書
- 眼科医による眼鏡の指示書(原本)
- 眼鏡の領収書(原本)
申請書は、保険組合のホームページでダウンロードできることがほとんどです。
注意したいのは、書類や領収書は、基本的には返却されないことです。
指示書や領収書は、自治体の給付でも必要となるため、自治体への申請がコピーで済むかを確認し、原本を求められる場合は書類の返却を保険組合に依頼しましょう。
2.自治体による給付
保険組合からの給付を除いた、自己負担分を自治体に補助申請できます。
以下の書類を自治体に提出します。
- 子どもの小児医療証
- 子どもの健康保険証
- 眼科医による眼鏡の指示書
- 眼鏡の領収書
- 給付金の振込先の銀行通帳
- 印鑑(自治体により銀行印を求めるところと認印でよいところがある)
- 健康保険組合からの支給決定通知書
給付割合や必要書類などは、自治体ごとに異なります。
ホームページでよく分からない場合は、問い合わせるのがおすすめです。
子どもの弱視用眼鏡のメーカー紹介
弱視用眼鏡もいろいろなメーカーを選べるようになり、3歳さんが喜ぶ可愛らしいもの、カッコいいものも増えています。
次女が使用しているのは、TOMATO GLASSESというメーカーで、サイドのハート模様がとても可愛いです。
1.TOMATO GLASSES
TOMATO GLASSESは子供用眼鏡の専門メーカーで、グッドデザイン賞・イギリス光学展示会 子ども眼鏡部門・アイウェアオブザイヤー キッズ部門などの数々の賞を受賞しています。
0歳から使えるシリーズもあり、品ぞろえも非常に豊富です。
予備のノーズパットやネジなどのスペアパーツが付いているため、ちょっとした修理は自宅で対応できるのも嬉しいポイント。
次女も1週間でノーズパットを壊しました・・・
世界各地で取り扱われており、非常に人気のあるメーカーです。
2.omodok
世界的に有名な眼鏡産地である、福井県鯖江市産の子供用専用の眼鏡ブランドです。
3-6歳向けと小中学生向けの2種類のシリーズ展開のため、3歳児さんの対応もバッチリ。
鼻パッドにサスペンションが入っているためフィットしやすく、おしゃれなデザインも魅力です。
3.ますながのこどもめがね
1905年創業の増永眼鏡の子供用ラインナップです。
プラスチック素材とチタン素材の2種類のフレームがあり、変形しにくく調節しやすいためお子さんにもピッタリです。
3歳児健診で弱視と診断された人によくある質問
子どもに眼鏡なんて・・・と思うのですが、本当に必要ですか?
弱視を放置すると、眼鏡をかけても視力が出ない状態におちいります。
将来の運転免許証の取得や職業選択にも悪影響を及ぼすため、速やかに眼鏡をかける治療を受けることをおすすめします。
昔よりも眼鏡をかけている幼稚園児が多い気がします。なぜですか?
3歳児検診での視力検査が一般化し、弱視の子どもを見つけやすくなったためです。
娘の通う幼稚園では、1学年70人中2人程度が眼鏡をかけています。
幼稚園・保育園では眼鏡をつけさせてくれますか?
園によりますが、出来る限り対応してくれる園が多いと考えられます。
次女の通う幼稚園も「出来る限りの対応はします」とお話を頂いています。
眼鏡をかけることが決まったら、早めに園に連絡しておきましょう
しっかり受診して子供の弱視を治療しよう
弱視は早めに治療すれば、改善の見込みは充分にあります。
医師や病院スタッフと連携を取り、指示された眼鏡をしっかり装着しましょう。
お子さんが健やかに成長することを、心より祈っております。
コメント