「健康経営」とは、企業が従業員の健康管理に経営の立場から取り組むことです。
健康管理のために、年1回の健康診断を行う企業は珍しくありません。
しかし、健康管理の施策を福利厚生の一環としてでなく、業績上昇のために経営的な視点を交えて行うことが「健康経営」の大きな特徴です。
経済産業省による認証制度スタート以降、健康経営を導入する企業が増加していますが、コストや手間から導入を迷う担当の方もいらっしゃるでしょう。
今回は、健康経営が病院経営にもたらす利益について、導入した病院の実例を交えて解説します。
健康経営の導入に迷う病院関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。
健康経営は病院経営に利益をもたらす
健康経営により期待できる利益は、以下の3種類です。
- 病院スタッフの生産性向上
- 離職率の低下
- 採用率の上昇
24時間体制で業務にあたる病院は、長時間勤務・不規則勤務が常態化しやすく、職員の健康管理は非常に困難です。
また、職員の退職や新規採用の不調による人員不足も病院にとって大きな課題ではないでしょうか。
健康経営導入後は、社会へのアピールが不可欠です。職員の心身ケアに積極的に取り組む姿勢は、病院の信頼向上と新規採用率の改善につながります。
内部(病院内)の取り組みと外部周知の相乗効果で、職場環境は徐々に改善するでしょう。
健康経営が病院の利益につながる理由
経済産業省ヘルスケア産業課の資料によると、健康経営に取り組む企業は以下の項目で低いスコアを示しました。
- メタボ該当率
- 喫煙リスク者率
- 空腹時血糖値リスク者率
- 脂質異常症リスク者率
- 血圧リスク者率
上の項目はすべて生活習慣病予防における重要な数字であり、スコアが下がることにより職員の健康状態が改善できることがわかります。
この章では、職員の健康状態の向上が、どのように病院の利益につながるかを解説します。
1.職員の生産性向上による利益率の増加
経営理念に健康経営を掲げて取り組むことは、企業の利益率にプラスの影響をもたらすことが2021年の経済産業研究所の分析で確認されています。
日本経済新聞グループらによる別の調査でも、健康経営を実施してから2年ほどののちに「総資産経常利益率」「売上高営業利益率」の両方が上昇する傾向が見られたのです。
また、所属する企業の健康投資レベルが高いと感じている人は、健康状態や仕事のパフォーマンスが良好な傾向であることも、経済産業省の調査で示されています。
注意したいのは、健康経営の実施から利益率の向上までには2年ほどのタイムラグがあるため、長期的な視点が必要なことです。
しかし、健康経営の実施とスタッフのパフォーマンス、利益率の上昇の3つには決して無視できない関係があるといえます。
2.離職率の低下を期待できる
経済産業省の調査によると、健康経営に取り組む企業の離職率は、取り組まない企業よりも明らかに低い傾向が見られました。
離職率を比較した下の表からも、健康経営に取り組む企業は全国平均より離職率が低いことは明らかです。
離職率全国平均(2020年) | 10.7% |
健康経営度調査回答平均 | 5% |
健康経営が離職率を下げる直接的な理由は明らかにされていませんが、以下の2点が推測されます。
- 職員のモチベーションが上昇し、職場への忠誠心も上昇した
- 適切な治療介入により、体調不良による離職を防止できた
医療費に関する調査では、健康経営により医療費の増加と減少、両方の調査結果が見られます。
医療費増大に関しては医療介入によるコスト増が原因とされていますが、どちらの調査においても健康経営は離職率を下げる可能性があると示唆されました。
体調不良による優秀なスタッフの離職は、病院経営においても大きな痛手でしょう。経営側が適切に介入し、職員の健康管理を行うことは大きな意義があるのです。
3.採用面のメリットが期待できる
健康経営銘柄に選ばれた企業からは、以下のような声が聞かれます。
- 学生の認知度が向上し、就活生の大幅増加や内定後辞退率の減少が見られた
- 優秀な人材の確保につながっている
また、経済産業省の調査によると「従業員への健康や働き方への配慮」を就職先に臨む就活生・就活生の親はそれぞれ43.8%、49.6%にのぼりました。
近年はワークライフバランスの概念も広く浸透しています。職員の健康管理に対する経営側の積極的な取り組みは、求職者への好印象につながるでしょう。
健康経営を取り入れている「黒沢病院」の実例
ここからは、健康経営を取り入れ「2023年健康優良法人ホワイト500」にトヨタやNTTなどと並んで選出された、群馬県高崎市の「黒沢病院」の例をご紹介します。
健康経営に関する黒沢病院の目的や方針は、以下の通りです。
目的 | 職員の健康増進を最重要視し、その健康管理を経営課題としてとらえ、数々の試み並びに改善策を実行する事で職員の健康の維持増進と法人の健全経営と業績向上を目的とする |
方針 | 職員の健康を最重要視し、職員の生産性の向上および法人全体の活性化を図る。取り組みを外部に広く公開し、社会全体の健康経営への意識向上を図る。 |
最高責任者 | 病院理事長 |
健康経営の統括 | 健康管理室(独立した、健康経営のための専任部署) |
健康経営の最高責任者を理事長と定め、施策の実行のために独立した部署を設置することで、法人全体として健康経営に取り組んでいます。
1.職員の健康度改善について
黒沢病院の健康診断における二次検査指摘率は順調に低下しており、2021年では2014年の約半分となる18.9%を達成しました。
検診結果だけでなく、運動習慣のある職員、睡眠による充分な休養が取れている職員の比率も改善傾向です。
現在は喫煙率、肥満率の減少などを目標としており、今後も職員の健康を増進させていくことでしょう。
2.年間売上高について
黒沢病院は、年間売上高も順調に推移しています。
年間売上高が、2020年に一時的に減少したものの、それ以外は毎年順調に増加しています。
2021年の年間売上高は、2014年と比較すると1.6倍の86.4億円を達成しました。
黒沢病院での施策例は、以下です。
- 当直勤務者への、管理栄養士による夕食・朝食の提供
- 当直明けに併設の天然温泉に入浴して、リフレッシュを図る
2021年の救急車受け入れ台数は2015年に比べおよそ1.5倍と増加。地域医療で大きな役割を果たしています。
健康経営の取り組みが、職員の健康やモチベーション維持につながった良い例といえるでしょう。
健康経営の導入はメリットが大きい
健康経営の導入は、以下のメリットがあります。
- 病院の利益率向上
- 職員の満足度向上
- 求人における優位性
とくに、口コミや評判が重要視される病院において、患者のみならず職員の健康管理にも気を配っているとアピールできれば、地域住民からの好印象にもつながります。
健康経営に取り組む企業は年々増えているため、早めの取り組みが重要です。
弊社〇〇は、健康経営に取り組む企業・病院のサポートを行っており、会社規模や業務形態に合わせた独自プランの提案に、高い評価をいただいております。
ぜひご検討くださいませ。
コメント